【強迫性障害】
今回は強迫性障害のカウンセリング過程をご紹介します。
強迫性障害はDSM-Ⅳ-TRという米国精神医学会から出されている『精神疾患の分類と診断の手引き』7 不安障害の一つに分類されていましたが、DSM-5では一つの大項目になりました。
症状は<強迫観念>または<強迫行為>の何れかまたは両方出ている状態です。
<強迫観念>とは「そんなことを考えるのはバカバカしい」「自分の考えすぎだ」とどこかでわかっているのにある考えに囚われ拭い去ることが出来ないという状態です
<強迫行為>は、上記の強迫観念を打ち消すために行う儀式的な行為です
やはりバカバカしいと解っているのですが止められません
代表的なタイプがいくつかあります。
◆不潔に関する恐怖・不安タイプ<不潔恐怖>
汚れや菌に対しての過剰な心配のため(観念)
何度も何時間も手洗いや入浴を繰り返したり、
ドアノブや電車の手すりに触ることが出来ない(行為)
などがみられる
◆確認しないといられないタイプ<確認強迫>
家の鍵や冷蔵庫の扉、ガス・電気などの消し忘れへの過剰な心配のため(観念)
生活に支障が出るほど確認を繰り返してしまう(行為)
◆健康を脅かされる不安タイプ
自分は病気なんじゃないか?病気になってしまうのではないか?
という異常な心配のため(観念)
病院で異常なしと言われても検査を繰り返してしまう(行為)
◆人に危害を加えていないかと心配になるタイプ<加害恐怖>
車の運転中に今人を轢かなかったかと心配になり(観念)
バックミラーを何度も見たり確認に戻ったりしてしまう(行為)
人とすれ違った時に相手にケガをさせなかったか心配になり(観念)
いちいち振り向き確認してしまう(行為)
◆罰が当たるのではないかと恐怖を抱えるタイプ
神様を冒涜する考えが浮かんで止められず、
そのために罰が当たるのではないかという恐怖にも囚われる(観念)
解っているのにやめられず、ご本人は疲れきってしまい、非常に辛い毎日を過ごされています。ですが周りからはなかなか理解してもらえないのが現状で、解ってもらえない辛さも抱えます。
でもこれはご本人が<完璧主義で責任感が強い頑張り屋さん>というお人柄のため、あまり人に頼らない・弱音を吐かない・相談しないといったことから苦労が伝わりにくい、症状も見えにくい、という事情も背景にあります。
強迫性障害の治療は主に2本柱と言われています。
薬物療法と認知行動療法(CBT)です。
強迫性障害が起こる原因の一つにセロトニンの調整異常が考えられています。薬物療法ではこの部分をコントロールしていきます。
CBTでは考え方やものの捉え方(認知の仕方)のクセを探り出し、自分に無駄な負担をかけていないかを考え修正したり、暴露療法といって、不安な状況にわざわざ自分を何度も曝して慣れていくという方法を取ります。CBTに関しては本もたくさん出ていますね。
でも、やってみたけどなかなか効果が得られない、というご経験をされている方も中にはいらっしゃるのではないでしょうか。私たちはこの2本柱だけでは足りないだろうと考えています。
と言いますのは、強迫性障害の症状というのはおおもとの不安をかき消すために出てくることが多く、薬物療法とCBTだけでは根元にある不安に届かない場合が出てきてしまうのです。
そこで、家族療法とFAP療法を使います。
家族療法には2つの側面を念頭に置いてやっていきます。
一つ目は家族の方に治療への協力をお願いするという側面
もう一つは家族の中で培われた信念に対する呪縛を解いていくという側面です。
(ご家族が悪いということではありません。念のため)
FAP療法では過去に抱えたトラウマに対してと、現在体にかかっているストレスの軽減を目的として行います。過去のトラウマはご本人にその記憶がなく語れない場合(幼すぎた等で)も多いのです。
トラウマが潜在意識に残っていることで、症状が次々と移っていってしまうという現象を起こします。(確認強迫の回数は減ったけど強迫観念に囚われている時間が多くなってしまうなど)その結果、色々な症状をぐるぐる回るだけで根本的によくなった感じがしない、という事態に陥り、頑張っても一向によくならない症状と治療に不信感と絶望感が生まれ、更に傷を深めていってしまいかねません。そうして“もうどうせ治らない”と更に心を閉ざし、諦めてしまった方もいらしたと思います。
FAPを受けていただく回数は個人差がありますが、経験的に申し上げますと、強迫性障害の場合はかなり回数を重ねます。その症状に至るまでにどれほどご本人が辛抱強く溜め込んで来られたのか…その顕われでもあるかのようです。
強迫性障害の治療は時間がかかりますし、何よりご本人の“治りたいと願う心”が必要不可欠になります。ご本人がそこを目指す限り、カウンセラーも決して諦めず、寄り添い、サポートして参ります。
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