代表的なタイプがいくつかあります。
◆不潔に関する恐怖・不安タイプ<不潔恐怖>
汚れや菌に対しての過剰な心配のため(観念)
何度も何時間も手洗いや入浴を繰り返したり、
ドアノブや電車の手すりに触ることが出来ない(行為)
などがみられる
◆確認しないといられないタイプ<確認強迫>
家の鍵や冷蔵庫の扉、ガス・電気などの消し忘れへの過剰な心配のため(観念)
生活に支障が出るほど確認を繰り返してしまう(行為)
◆健康を脅かされる不安タイプ
自分は病気なんじゃないか?病気になってしまうのではないか?
という異常な心配のため(観念)
病院で異常なしと言われても検査を繰り返してしまう(行為)
◆人に危害を加えていないかと心配になるタイプ<加害恐怖>
車の運転中に今人を轢かなかったかと心配になり(観念)
バックミラーを何度も見たり確認に戻ったりしてしまう(行為)
人とすれ違った時に相手にケガをさせなかったか心配になり(観念)
いちいち振り向き確認してしまう(行為)
◆罰が当たるのではないかと恐怖を抱えるタイプ
神様を冒涜する考えが浮かんで止められず、
そのために罰が当たるのではないかという恐怖にも囚われる(観念)
解っているのにやめられず、ご本人は疲れきってしまい、非常に辛い毎日を過ごされています。ですが周りからはなかなか理解してもらえないのが現状で、解ってもらえない辛さも加わります。
でもこれはご本人が<完璧主義で責任感が強い頑張り屋さん>というお人柄のため、あまり人に頼らない・弱音を吐かない・相談しないといったことから苦労が伝わりにくい、症状も見えにくい、という事情も背景にあります。
家族や親しい人が巻き込まれることもあります。例えば、
強迫性障害は“静かな疾患”で、はたから見ているとそんなに疲れることをしているように見えませんが、脳はずーっとぐるぐるとフル稼働しているので膨大なエネルギーを消耗しています。例えて言うと、ずっと止められないランニングマシンに乗って走り続けているような状態です。
止めるスイッチを入れるためにはある程度エネルギーが必要なのですが、これ以上走れないくらいくたくたなのでそんなエネルギーを確保できるはずもなく、やめることができないのです。表面上はご本人の意思でやっているように見えてますので、周囲もどうすればいいか困っているというのが現状です。
それでもまだ強迫行為は症状が表面にでているので比較的周囲の人に気付いてもらえ、治療にもつながりやすいのですが、強迫観念は頭の中で起きているので発見されにくく放ったらかしになってしまうことが多いです。そして長引けば長引くほど悪化する傾向が強いです。
これは私見ですが、脳が疲れによってうまく動かせなくなっていて、『切り替え』がうまく出来なくなってしまう状態であろうと推測しています。切り替えが出来ないので同じことを繰り返してし、考え方や見方を変えることも困難になっている状態であろうと思います。
強迫性障害の方が訴える不安の内容を見てみると、その疾患に罹ってない方からすれば、そこまで不安に思わなくてもいいのでは?そこまでやらなくてもいいのでは?と思われることばかりです。なのでなかなか理解されにくいのですが、実はそれはある目的のために創り出された不安なので、不自然な内容なのです。
その目的というのは『本当の不安を隠すこと』です。深いところに横たわっている不安を見るのが怖すぎるために、隠しておくベールとして創り出しています。
それは心の傷(トラウマ)によって抱えた自己無価値感(自分には価値がないという感覚)と無力感(自分にはなんの力も能力もないという感覚)です。私たち人間にとって、このふたつの感覚はものすごく辛いと感じるものです。極端なことを言ってしまうと精神的に参っている人の行動の動機が、“これらをなんとかしようとしているため”ということに行き着きます。それほどのことなので目を逸らせて見ないようにしようとするか、なんとか克服しようととします。
強迫性障害はその両方をやっている感じです。心配事をつくってご自分の無力感・無価値感から目を逸らせ、強迫行為を行って心配事を“自分の力で”解決しようとします。一時的には対処できた感覚になり安心感が出るのですが、実際には根本のトラウマは解消されていないのでまた不安に襲われます。そしてまた不安を解消しようと強迫行為を繰り返すということになってしまっているのです。
まずランニングマシンを止められるだけのエネルギーを確保する必要があるのと、ご家族の協力が大切になりますので、家族療法とFAP療法を使い、以下の手順ですすめます。
②精神的な疲れ・ストレスの軽減
溜まったストレスによって脳や体が思うように動かなくなり、切り替えがうまくいかなくなります。ここを軽減することで切り替えやすくします。
④家族療法
4つめに入れてしまいましたが、できれば初めからご家族様に治療のご協力をいただければと思います。強迫性障害はご家族を巻き込んでしまうことがあるのと、逆に気付かれずに進行してしまう場合があるのでそばにいるご家族の協力が大切です。
発症のきっかけはちょっとしたことだったりします。例えば、鳩の糞を踏んでしまって嫌な思いをしたとか、テレビで菌の話をしていたとか…。そういう経験をした方が過去に親などから「鳩の糞ってすごいバイ菌だらけで危ないんだって~」という話を聞いてしまっていると、情報が重なって過剰に怖がる様になります。そこに脳や体の疲れによってうまく切り替えが出来なくなり症状につながります。
トラウマが潜在意識に残っていることで、症状が次々と移っていってしまうという現象を起こします。(確認強迫の回数は減ったけど強迫観念に囚われている時間が多くなってしまうなど)その結果、色々な症状をぐるぐる回るだけで根本的によくなった感じがしない、という事態に陥り、頑張っても一向によくならない症状と治療に不信感と絶望感が生まれ、更に傷を深めていってしまいかねません。そうして“もうどうせ治らない”と更に心を閉ざし、諦めてしまった方もいらしたと思います。本当にしんどいと思います。
しかしこの疾患は、過去に心の奥に仕舞いこんだ悲しい気持ちや怒りたかった気持ちを教えてくれているのです。そしてそれを出してもらえるのを待っています。その症状の強さは今ここに至るまでにどれほどご本人が辛抱強く溜め込んで来られたのか…その顕われでもあるかのようです。
強迫性障害の治療は時間がかかりますし、何よりご本人の“治りたいと願う心”が必要不可欠になります。ご本人がそこを目指す限り、カウンセラーも決して諦めず、寄り添い、サポートして参ります。
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